焦点

最近本の字が読みづらいと嘆く院長を見て、生類憐れみの令を発動したカミさんがCMでおなじみのメガネルーペを買い与えてくださった。
使ってみるとなるほど、よく見える。さすが拡大鏡だ。だがしばらく本を読んでルーペをはずすと、目の焦点を合わせるのに少し苦労することに気づく。

そういえば中学生のある時期、テレビの画面を見て、どこに焦点を合わせたらいいのか、戸惑ってしまったことがある。兄姉に尋ねても、質問の意味さえ分からなかったようで回答なしの、不思議な経験だった。
人生、どこに焦点を当てて生きていけばいいのか、迷っているうちにその症状はなくなったのだが、いったいあればなんだったのだろう。

思うにカメラマンの目線がどこにあるのかを考えていたのではないだろうか。カメラマンは映像を撮っているとき、かならずどこかに焦点を当てているはずだが、それが映像として流れてくると、見る側にしてみればどこを見ているのか不明ということになる。

普段、女性の胸元に目線を集中している輩が、なぜそんなことを考えたのか、そう問われても答えようがないが、焦点の定まらないメモになってしまったという指摘だけは、きっちり焦点があっている。