数える

babys

 小学校に上がる前のことだが、十を越えると数を数えることができなかった。一から数え始め九、十の次が百になるのだ。兄姉たちは幼くかわいい将来の大院長を笑いものにするため、それを何回も繰り返させる。当の本人はなぜ違うのか全く理解できず、九、十、百と繰り返す。年の離れた兄姉たちはその馬鹿さ加減に大笑いする。それにつられていつの間にか幼い天使のような美少年も、馬鹿にされながらも一緒に笑い出す。
 そうした楽しい、トラウマのような記憶がある。


 そもそも人はいつから数え始めるのだろう。考えていたらこんな記事があった。人はバブバブと喃語(なんご)を語っていた赤子のころ、数を理解していたかも知れないというのだ。
 
 デューク大学の研究者たちの報告だ。彼らは7カ月の赤ん坊を相手にこんな実験をしてみた。
 2人もしくは3人が「こっち向いて(look)」と呼びかけている声を赤ん坊たちに聞かせる。それと同時に、2人もしくは3人の女性たちが「look」としゃべっている二つのビデオ画像を流す。
 すると赤ん坊たちがビデオを見るのは、声を出している人数と一致している方が多かった。つまり数の概念がすでにあるのではないかというのだ。
 なるほどそうだったのか。
 今まで女性から「こっちを向いて」といわれたことがある。いやいわれたと思っていた。学校や職場や飲み屋さんでのことだ。だが振り向くとそこには誰もいないことにやがて気づくのだ。こちらの勝手な思い込みか、あるい「あっちを向いて」といわれたのか今となっては分からない。
 十より先を数えることのできなかったアホ小僧のことだ。一人さえも数えることのできないその未来はさもあらんということだろう。
(補足メモ)
1.喃語とは生後2~3ヵ月ごろより、「あ-」とか「う-」などと自然に出てくる発語で言葉の原型になるもの。(ネット検索より)
2.もし数の概念があるとすると「あー」とか「うー」とかいいながらも、赤ん坊はそばにあるものの個数を数えているのだろうか。だが仮にそうだとしても回りのものには理解できない。”テン”で”ナンコ”か分からないから”ナンゴ”というのだろうか。
3.「こちらを向いて」といわれたように見えてもそう振る舞うことは恥だと青年院長は学んでいく。ようやく数の心を知ったということだ。これを数値心と名付けたい。

ネタ元
Babies get abstract with maths
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