声援

 昨年暮れに宮古島トライアスロンの出場が決まった。長丁場のレースなので、昨年の8月以降、練習らしい練習はしてない身としては、 ちょっとヤバサを感じ始めている。いまのままではトップを狙うどころじゃない。宝くじに例えれば、いつもトップを狙うんだけど、300円がせいぜいの成績しか残せてない現状がさらに悪くなる。
 ということで今日、寒風吹きすさぶなか久しぶりにチャリの練習をした。


 近くの田園のなかにある丘を中心に上ったり、下ったりしながら周回した。だいたい一周が2、30分程度かかる。その4週目に入ったときのこと。少し上り加減の平地を走っていたんだけど、100mほど離れたところにお寺があって、そこの境内に小学生の女の子達が4,5人たむろしているのに気づいた。
 で、向こうもこちらに気づいた様子。なんとなく注目されているのは分かって気恥ずかしかったんだけど、なんと彼女たち、このオヤジに手を降り始めたじゃない。
 それだけでなく、それぞれが一度や二度ならず、「がんばってくださーい」と遠くから大きな声で声をかけてくれる。なんと田舎の子は素直なことか。院長のようにシティボーイでなくても、誰もがきっと彼女たちの誠実さを感じるシーンだろう。こちらも気分良く手を振って応える。
 そうそう、それでいい。明日の日本など考える必要はない。目の前でがんばっている人を応援することが大事なのだよ。
君たちが声援してるのが、息を切らしてるオヤジだと分からなくてもいい。遠目で見えるかどうか分からないけど、お腹の出具合なぞ気にしなくてもいいのだ。
 そう心で諭しながら彼女たちと別れた。
 心はさわやかになったけど、ただ寒い。時速200kmは出てなかったと思うけど、さすがに自転車での走行は寒い。とくに足の指が冷える。チャリをやった人なら分かるはずだ。一生懸命働いてるのに、ちっとも豊かにならない院長と一緒で、足は懸命に動いてるのにその指さきには血がめぐらないのだ。
 ということで、5週目に入ったとき、止めようどうか迷った。で、彼女たちがいなければ周回を止めようと決めて、例の平地を走ってると、なんと彼女たち、今度は道ばたで応援してくれてるじゃない。
 さきほどと同じ黄色い声で、「がんばってくださーい」と声を投げかけてくれる。みんなほっぺが赤い。そばに一輪車があったから、みんなで練習でもしてたんだろう。さすがに田舎の子は寒さに強いんだなぁと感心しながら、もちろん今度も手を振って応えたんだけど、その場を過ぎ去るとき、声援とは違った声に気づいたのね。
いわく、「オジサンなのね」
 6週目に入ったとき、彼女たちはどこにも見あたらなかった。いくら田舎の子とはいえ、この寒さには耐えられなかったのだろう。あるいはなにかその場を離れる理由でもあったのだろうか。
 よく考える気もしないまま、寒さも十分増してたし、そのあと、とっとと帰路に着いた。

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