再発明

机の横に置く棚が欲しく、数か月前に組み立て式のものを購入し、家で組み立てようとしたら、ドライバーがない。ただのドライバーでなくラチェットドライバーという、回転の歯止めがついたもので、おなじみのドライバーの回転の半分は力が加わらない。この加わらないという点がこのドライバーの特長で、ずっと先端をねじに当てたまま動作を繰り返せるのだ。

実はラチェットドライバーという名前は、今こうしてメモしていてネットで調べて得たものだ。
10年以上も前に購入したお気に入りのその手のドライバーがあったのだが、家のどこを探しても見つからない。そこで近所にある最近オープンした工具専門店に足を運んだのだが、驚くことにそこのおやじは名前どころか、そうしたものがあることさえおぼろげだった。

通常ドライバーでの手や腕の疲れ具合を思い出して、結局、購入した棚は、組み立てられないまま、放ったままになっている。

プログラミングの世界では車輪の再発明にという言葉がある。すでにあるコードをもう一度書くという意味で、あるならそれを利用して効率的にやれ、ということだと理解しているが、このラチェットドライバーは、真の意味でのドライバーの再発明だと思う。
なにせ回転を伝えるものを伝えないものとして用いるのだから。

あのおやじ、そんなすばらしいものを知らないで、よく専門店ができるものだと、思っていたが、よく考えるとネットがあるではないか。
店まで行くのではなく、店が来てくれるという購入スタイルの再発明こそ、ネットショッピングだろう。

そんなすばらしいことも気づかないで、よくこの数か月生活してきたなぁ、とおろかな自分を再発見するのでもあった。