並走

 長年ランニングをやってきたものとして感じることがある。ランニングは人生と一緒だ。つらくても淡々と足を前に運ばねばならない。
 だが並走者がいればなにかと力を得ることができるものだ。励ましあうこともできれば、相手を見て自分の状況を客観的に捉えることもできる。口うるさいカミさんだが一緒にいて感じる安堵感とでもいったようなものをランニングの並走でも得られるような気がする。


 だが実際問題としてランニングで並走してくれる人を探すのはなかなか大変なのだ。たとえ仲間と一緒に大会に参加しても力の差があればいずれ離れていくことになる。
 そこで考え出されたのがハイテクを用いたツールだ。メルボルン大学の研究者の手によるもので、まだプロトタイプの段階だがなかなかおもしろいアイデアだ。
 GPS受信機と3ギガのモバイルホン、小型パソコンならびに頭部への装着装置からなる二組のセットで構成されている。
 簡単にいえばパソコンがそれぞれの走者の位置をGPSで確認しながら疑似並走の状況を作り出すというものだ。ポイントは頭部に装着した機器から出てくる音だ。
 仮にAとBが並走しているとしよう。並走とはいっても二人は別々の場所で走っている。それでもAが先に進めばBにはAの足音が前方から聞こえ、逆にAが遅れればBにはAの足音が後方から聞こえる。もちろんAにも同じような状況の音が聞こえている。同じペースで進めばお互いの足音が横で走っているように聞こえるというわけだ。
 音の大きさを調節すればいいだけで、走力の差が大きくても使用可能だという。
 もちろん会話も可能だ。だとすれば、たとえば一方が坂道にあるとき息遣いの齟齬が生じるかもしれないなどという懸念が指摘されてはいるものの、アイデアの奇抜性は変わらないだろう。
 将来、ネットで並走者を探すようなシステムを作ろうと研究者は考えているようで、あるいはビジネスとしても大きな展開を見せるかもしれない。
 どうだろうか、おもしろいではないか。早速わくわくしながらカミさんにこの話をしてみた。
 だが最近誕生した双子に構い切りのカミさんからは気乗りのしない返事が返ってくるだけだった。
 人生の「へー、そう」者の足音は二人の息子の足音とともに、はるか前方から聞こえるようになってきているようだ。

ネタ元
Lonely joggers find company at last

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