ネコ

 クリニックではヒマなときほど、忙しい。なぜならスタッフとの会話がはずむからだ。
 ということで、今日もとても忙しかった。
 そのとき中年のおかあさんスタッフが語った話。もうとっくに成人されているお子さんが、小学校のころネコをもらわないかとのお誘いをもらってきたそうな。

 持ちかけたのは学校のおばあちゃん先生で、なんでもその先生チのネコに子供ができたからいらないか、ということだった。
 スタッフの家にも直接、電話がかかってきたほどだから、よほどもらい手を探していたみたい。
 そのころ、おかあさんスタッフの家には、犬とかうさぎとかいろいろな動物がいたので、おかあさんスタッフは最初反対してたんだけど、お子さんがあまりにせがむので、まぁ子ネコだったらかわいいだろうし、ということで結局、引き取とることになった。
で、お子さんが抱えてきたのは、ペルシャネコのようなりっぱな毛をしたネコ。だけどりっぱなのは、毛だけじゃなかった。体格もりっぱな大人のネコだったのね。
 つまり子ネコが生まれたから、親ネコを引き取ってくれないかという話だったわけ。そのスタッフの方、ネコが天命を全うするまでしっかりと飼われたというんだけど。
 この話、聞いてて、しっくりこない。
 なんといっても子ネコが生まれたとき、普通動くのは子ネコだろ。
もちろん、おばあちゃん先生が少しボケていて、間違って親ネコの話をこの子に持ちかけたのかもしれない。だけど、いちおう先生だから そんなことはあるまい。うちのクリニックでも、疑いの目をしながらもいちおう先生だからそんなことあるまいと、薬を受け取っていく患者がたくさんいる。
 だとすれば先生は、きっと親ネコだといってたはずで、お子さんもそれを納得して家に持ち帰ったんだろう。
 もちろん、おかあさんスタッフはそうと分かっていたら、拒んでいたに違いない。
そうなると、おばあちゃん先生とお子さん、タッグを組んで親ネコを家に持ち込もうとするんだろうか。
おかあさんスタッフの声などまるで聞こうとしない。
 こうしたお互いに心を拒み続ける事態をこそ、ネコにこばんだ、というんじゃないのだろうか。
 謎はつきない。

“ネコ” への1件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。