今日街をランニングしていたときのこと。同じ歩道を走っている自転車からさっと抜かれたのね。荷台にはお子様用のカゴが付いている。その中に三才ぐらいの坊やが、母親らしき女性の背をしっかりつかみ、乗っていたんだけど、追い抜くとき、ボクが珍しかったのか、振り向いたまま、じっと見つめていた。
こりゃ挨拶でもしなくてはと、走りながらボクは腰のあたりで手を振ったんだけど、それを見て、その子、急に恥ずかしそうにうつむいてしまって。
なんだか楽しくなり、自転車に追いつくようにピッチを上げて様子をうかがうことに。
坊や、しばらくすると、またボクの方につぶらな瞳を向けてくる。なんだかかわいくて、また手を振ったんだけど、これまたうつむいてしまうのね。
そんなことが4,5回あった後、思いがけず彼、ずっとうつむいたままになってしまって。よっぽどシャイだったのね。
ボクの方はピッチを上げてたのはいいけど、結構心臓がバクバク状態になりかけていて。彼が反応を見せなくなっても数十秒は追っかけたんだけど。で、いよいよ、こちらがへたってしまってしまう頃になっても、坊やこっちを見ようとしない。
仕方なくまたもとのスピードに戻した。すると自転車との距離もだんだん開いていったんだけど、80mほど離れたときだったろうか。その坊や、また急に後ろを振り向いて。
なんとそれからずっと手を振り続けてくれたのね。
変なオヤジから襲われることのない安全圏に入った安心感だったのだろうか。それともシャイな気持ちを振り切ってのさよならのあいさつだったのだろうか。いまとなっては分からない。
でも、坊や。それでいいんだよ。おじさんみたいに、なにもかも恥ずかしくなくなった人とコンタクト取ること自体が恥ずかしいことなんだから。
いまから大人になるなかで、なにが恥でなにが恥じゃないか、そのシャイな態度で見極めていきなさい。
そう心に念じながら、こちらも手を振り続け最後の言葉をかけたの。
シャイなら、って。