だまし絵

子供らの中学入学祝いだからと、ちょっと財布のひもを緩めてみた。もちろんカミさんの英断だ。
場所はホテルのレストラン。


予約していた時間に行くと、横は5m、縦は3mはあっただろうか、壁に描かれた大きな絵の前にあるテーブルに案内された。上の2枚がその絵画で、1枚はカメラに入りきれず追加したものである。
食事を進める最中も、絵に目が行かざるを得ず、眺めていると、なんだか違和感を感じてきた。
絵のなかの同じテーブルにつく人も含め、その場の全員がお互い目を合わせておらず、奥のテーブルの男女の周囲との空間が変に狭く微妙におかしく、また右端の男性の影も気になる。

だれの作品か近くを通るスタッフに訊いても分からず、しばらくして責任者らしき男性が来ても、やはり分からないと頭を下げる。


画家のなんらかの思いが強くあらわされた絵なのかな、とひとまず納得し、話題が中学生活や制限されるオヤジの小遣いなどに変わったが、しばらくして、また絵の話に戻った。というのは、手前の女性が気になり始めたのだ。写真に撮ると、それもボロっちぃガラケイで撮っているせいか、そう見て取れないかもしれないが、女性の茶色の箇所だが、黒いコートをまとった女性の髪の毛のように見え、だとすると上の赤い帽子のようなものはなんだろうと疑問がわく。

よく知られた錯視の「少女と老婆」の先にある飾りのようにも見えるのだが、そう解釈を述べると、カミさんから違うと反論される。黒いコートを椅子にかけ茶色のコートを着た女性なのだというのだ。

なるほどそうだ。でも黒いコートを着たままの女性とした場合、コートを脱いだとした場合の女性の首は、肘をつく男性の手にも見えるではないか。むしろコートを脱いでいる女性だとしたら、上半身が奇妙に長くないか。そんな疑問を発したのだが、大蔵大臣は黙ったままだった。

結局、これはだまし絵みたいなものなのだろうか。
レストランだけに、客にいっぱい食わせようという魂胆なのだろうか、と首をかしげ、減らされる小遣いも気になりながら店をあとにしたのであった。