「われら闇より」

「われら闇より天を見る」(早川書房)を読み終えた。
原題は「WE BEGIN AT THE END」、つまり「終わりから始める」だ。
長編だからだろうか、読み終わった後、不思議なことに昔やっていたトライアスロンのゴールを思い出していた。

人は、ことを始めたらいろんな困難に出会う。少しのつらいさ、とてつもない難題、もう放り出すしかない壁、いろんなやっかいごとに出くわす。多くの人はそれをなんとかやり繰りする。そしてそのつらさを忘れ、あるいはそのつらさをバネにまた新たな一歩を踏み出すのだ。

人生ってそんなものだろう。特異なシチュエーションで込み入ったプロットになっているが、要はそうした物語だ。

そういえば、ゴールのあとはいつも涙ぐんでしまっていた。何キロも泳ぎ、数百キロも自転車をこなし、そして何十キロも走る。

途中でなんども思う。なんでこんな馬鹿げたことをやっているのか。そんなおろかな自分をのろい、それでも道に集う人たちから声援され、つらくても痛くても前に進み続ける。

ばかなことに望んだことへの悔いもあるのだろう。決して怠惰な自分への贖罪などといった高慢な気持ちなどないのだが、最後にはゴールのテープがそんな風にも映ってしまう。

そしてそのテープを手にすると、必ず涙ぐんでしまうのだ。

小説を読み終えるといつのまにか頬を涙が伝っていた。そしてそれはゴールのときの涙と同じ味がした。

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(いろいろある中で適当に選んだ、本当に若かりし日のゴール後の写真をアップしてみた。
こうした大会ではプロの写真家さんがレース中のいろんなシーンを撮りためて、ゴール後、選手に販売し生活の糧にされることが多い。
アップしたのは5cm平方のもので、sampleとあるのは、購入を催促するためのものだ。どこのレースかさえ分からないが、ざっと探しても大きな写真はなかったので、人生の次のステップへ向けての散財を防ぐため、購入しなかったのだろう)