郵便屋さん

 ドイツの郵便局で2001年から犬の心理学のレクチャーが始まった。今までに8万人近くの郵便屋さんたちがレクチャーを受けている。その結果犬から襲われる件数は減少しており、ある部署は半数までなった。今年のXmasでは、ここ10年で一番犬から襲われることが少なかったほどだ。
 犬が襲ってきても逃げてはだめで、その危険な状況でどう振る舞えばいいかを理論と実践で教えられる。たとえば、犬の訓練士がなぜ犬より早く回ることができないのか、犬を連れている人にどうやって犬から噛まれずに手紙を渡すことが出来るのかなどを教えてくれる。


 こんなことが書いてあるネタ元を読んでふと思い出すことがあった。
 犬が吠えてきたとき、大きな声をこちらが出せば吠えなくなるというのだ。何年も前にTVで紹介されていたもので、番組で実際にやっていたが、その通り大型犬が静かになっていた。確か、大きな声を出すと上位のものだと理解するというようなことをいっていた。
 
 それからまもなくしてこの豆チキシを使う機会に巡り会えた。近所をジョギングしているときだ。中学校の通学路でもある狭い道で帰宅中の学生たちを縫うようにして走っていた。そのときお嬢さんが子犬を連れて家から出てきたのだ。紐が付いていて散歩にでも出かけるつもりだったのだろう。
 なにごともなければそのまますれ違ったはずだ。ところが事態は違った。その子犬がこちらに向かって吠えだしたのだ。出会い頭のことできっと驚いたのだろう。こちらも思わず立ち止まってしまった。
 ワンだけじゃない。ワンワンワンワンワンワンワンワンと吠え続ける。このベッカム似のおやじがそれほどにくいのか、そう思うと不愉快になってきた。そのとき思い出したのだ。こちらも負けずに大きな声でワンと吠え返してやった。TVでは静かになったのだ。これで事態は収拾されるだろう。そう信じて吠えた。
 ところがだ。吠えるのを止めないのだ。お嬢ちゃんはこちらへ向かおうとする子犬の綱を引っ張りながらなだめているが、それでもクソ犬が吠え続ける。腹立たしくなりもう一度、大きな声でワンと吠え返したが、それでもやまない。
 回りには学生たちが立ち止まっている。こうなったら意地だ。ワンワンと吠え返すしかない。1分近く吠え続けただろうか。
 でもクソアホ犬は負けなかった。
 しばらく考えた。回りにたむろする学生たちの気配を感じながら人生をかけて考えた。分別ある院長が身をひくしかないだろう。そう冷静な結論を下した。賢者というのは決断すると行動が早いものだ。院長も例外ではない。そう判断するとすばやく身をひるがえし、再び立ち止まる学生たちの間を駆け抜けその場を去った。
 今思うのだが、あのクソアホチビ犬はこちらをどう思っていたのだろうか。自分より下位のオヤジだと思っていたのは間違いないだろう。それだけでなくよくしゃべるオヤジだとも思っていたのかもしれない。
 この、雄弁やさん、と思いながら吠え続けたのだろう。

 大晦日というのにいつにも増してつまらないメモになってしまった。来年は戌年、年賀状を運んでくる郵便屋さんという二つを結びつけようと思ったのだが、無理だったようだ。
 こんなメモだけど、来年もよろしく。 
ネタ元
Postmen taught dog psychology

“郵便屋さん” への1件の返信

  1. いつも読むだけでニヤッとしてます
    気の利いたコメントを残せずにごめんなさい
    来年もよろしくお願いいたします

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