旅の帰路の途中だった。台風11号が近づいていてもなんとか無事フェリーに乗って旅先に向かい、かつ戻ってくることができた。これも旅の神様のおかげだと信じていた。
だが順調な旅は一転した。高速道路を運転していると車が渋滞し始めたのだ。間もなく後方からパトカーがサイレンを鳴らしながら近づいてきた。それを受け車を端に寄せてやり過ごす。
どうやら事故があったようだ。渋滞の先、三,四百メートルに目をやると、すでに到着してるのだろう、いくつかの救急車両のものらしき赤色灯が見えた。やがて二車線だった車列がその場の警察官の誘導で左一車線になる。そして車列は動かなくなった。
なんということだ。これでは帰宅時間が大幅に遅れるではないか。信じた己がバカだった。旅の神様などやはりいるわけないのだ。そもそも旅の神様がいれば、交通事故なんて起こらないのではないか。台風も来るわけがない。
そう悲観とも憤怒とも知れぬ思いが一瞬よぎったのだが、先を見るとどうやら時間を置きながらもわずかながら車列は動いているようだ。やがてその動きはゆっくりとした波のように伝わってくる。数メートルづつだが間違いなく進んでいる。
事故の状況はまったく分からないが、動いているということは少なくとも一車線の通行は可能だということになる。
ひょっとすると旅の神様が車の流れをよくしてくれたのかもしれない。
そうすぐさま改宗したが、それにしても遅い。一車線でも、使えるならもっと早く動いてもいいだろう。イライラしながら進むこと約20分、ようやく事故現場の近くにまでたどり着くことができた。
まずパトカーが右車線に止まっているのが見えた。それを過ぎると黒の普通車がボンネットをこちら側に向け、後尾を左側に振って止まっている。ボンネットの右は大きくへこみ、そのへこみは車体の右側面にまで及んでいた。エアーバッグが開いていたから衝撃のほどが知れる。なにかに衝突したあとスピンしたということだ。
その事故車を過ぎると救急車が止まっていた。男女の連れが立ちすくんでいて、ほかに一人、担架に乗せられているところだった。最初自損事故かと思ったが、救急車から10mほど離れたところに白の普通車が止まっている。その車は進行方向にきちんと停車しており左車線から見る限りでは車体に損傷はない。
車を進めている左車線には破片もなにもないようだった。果たして事故の状況はどんな風だったのだろうか。考えながら進んでいると先にパトが止まっていて、そこで事故処理の現場は終わっていた。
その場を過ぎて思ったことがある。
もちろん事故当初は二車線が塞がっていたかもしれない。だが少なくとも進み始めたときには、一車線とはいえ通行可能状態だったわけだ。それなのになぜ車列はゆっくりとしか進まなかったのだろう。
疑問を口に出すとカミさんがこう応えた。
「みんな見てるんじゃない?」
荒波のなかフェリーで船酔いになり、雨に遭って観光地巡りも車内から降りず、高速道路で前もよく見えないほどのどしゃぶりに合っても、無事ここまでたどり着くことができたのは、ひとえに旅の神様のおかげだと信じている。
なるほどここでもまた旅の神様がドライバーに注意を促しているわけか。そう納得しつつ旅の神様のおかげで楽しかった旅の残り少ない行程を急いだ休日だった。
ありがとう、旅の神様。もしお会いする機会があれば、ぜひデコピンさせてくださいね。
船酔いや、渋滞の中の旅行、お疲れさまでした。
それにしても。。。何だか大変そうな事故ですね。
もしも少し早くにそこを通過されていたら、巻き込まれてたかも。。
それに免じて、デコピンは許してあげてください(^^;!?
毎回、高速事故で、渋滞したらお金を返して欲しいと思うのは、私だけでしょうか?時間をお金で買ってるのに・・・。
ジャスミンさん>
なるほどデコピン中止ぐらいで事故が回避できるなら、さっそく受け入れたいと思います。
あすかのふるさん>
わたしもビールをお金で買っています。二日酔いになったらお金を返して欲しいと思うのは、わたしだけでしょうか。