お上の高齢者への温情のおかげで、わずかな年金をもらえるまで長生きさせていただいた。車は走る棺桶というが、毎日乗っている高齢者としては現実味を帯びてきたので、先日届けられた免許更新のための高齢者講習会に早速参加してきた。
会には15,6人ほどが参加していた。目の検査や運転の実地講習などがあり、いくつかのグループに分かれて進行するのだが、もう少し効率的にやる方法がないのか、と大きな疑問を抱くほどまったりとしたものだった。きっと動作の鈍い高齢者のことを慮っていただいているのだろう、そう考え白昼夢に浸ることにした。
高齢者口臭会はさすがに臭いがきつかった。動体視力検査もビデオで佐々木投手の球速を当てさせられるなど、結構きつかったが、みんな適当に150キロベースの回答をいっているようで、それで問題なかったようだ。
実施試験は会場の自動車学校と実際の高速道路で行なわれた。
まず自動車学校では、直線道路で停止させられた。しばらくすると象がドタドタと正面から全速力で向かってくるではないか。
あわててギアをバックに入れて発車すると、「合格」といわれた。指導官がいうにはなかには象に向かっていく講習者もいるという。
高速道路ではサービスエリアから出るとき指導官から逆走のルートを指示された。さすがに無理難題だと伝えると、「合格」といわれた。
実地試験が終わり、全員が教室に戻ると、指導官たちがひそひそ集まり話し合っている。数えるとメンバーは14、15名になっており、逆走した参加者がいたと思われる。
ハッと気づくと指導官が会の終わりの言葉を告げている。尿漏れもなく高齢者には長い時間だったが、講習会は、かくして無事終了したのであった。