願いごとができたのでカミさんがお祓いに行くと言い出した。神さまなんているわけない。科学的合理性を信じるものがお祓いなど受けられるか、と意見すると、カミさんは、じゃあお前がやってみろという。お祓いのときに使う棒の名前も知らないものがやれるわけがないと答えると、じゃあ行くしかないと反論され足を運んだ次第だ。
行った先は全国的にも名の知れた神社で境内はたくさんの観光客でにぎわっている。詰め所で案内をうけている最中にも、本殿では十数名の人がお祓いを受けている。案内係から待っているようにと指示された本殿脇の待合いにも十名近くの人がいた。
やがて呼ばれて待合いの全員が本殿に上がる。本殿中央の空間はは鏡や玉串をささげる台があり空けられている。
その中央に向かって右側に広島から来た小学校と中学校のお受験を抱える家族4人が並んで座った。といってもあとから神主さんが上げるミコトノリで分かったことだ。名前から住所から願い事まで神さまだけじゃなくその場にいるもの全員が聞こえるミコトノリで、それぞれがそれぞれの状況を把握できたはずだ。
あとで詐欺などに利用されないだろうか。このメモをしているものを除いてたちの悪い人がいないことを願うばかりだ。
それはさておき中央に向かって左側の配置はこうだ。
中央から厄年の人がそれぞれ一人ずつ座る。この二人は同じような法被を着ていたので一緒にお祓いを受けにきたのだろう。
その左に就職試験合格願いの人、さらに左には情報処理資格試験合格祈願の人がもう一人いて、さらにその左にカミさんが座った。お受験家族を除き、左側は願掛けの人がそれぞれ前列に位置し、家族のものはそのうしろについた。つまりカミさんとそのゆかいな仲間は一番左端にいたことになる。
こうしてお祓いが始まった。
神主さんが祈願者たちに背中を向けて祭具を前になにやら神さまと交信を始める。その場所は本殿の左端にあったため、拍手や深々とした礼を目の前で観察することができた。なるほどカミさんにもそう接すれば日々の安寧が得られるのかと納得する。
礼のタイミングなどの式次第は壇の左端から巫女さんがみんなに聞こえるようガイドしてくれるので、神事にうとくても大丈夫そうだ。
そうこうするうち神主さんが取り出したのが例の棒だった。振り向けば彼の目にはまずこの二人が映るはずだから、当然一番にお祓いを受けることになると思いきや、なんと右に移動しお受験家族からお祓いが始まった。儀式とはそういうものなのだろう。合理的な判断とは別物なのだ。
巫女さんの指示に従い深々と頭をさげる幼稚園児の姿を見てると、それだけで合格といってあげたかったが、事情はお祓いのあとで分かったことなので声をかけられない。
そのうち棒の動きが止まる。右側はお受験家族だけなのでやがて神主さんは左の方に移動してきた。とはいってもかなり中央寄りだ。
そして巫女さんが頭を垂れるように指示を出す。だが神主さんの立ち位置からいったいだれのお祓いをしようとしているのか分からない。
厄年の人たちの厄を祓おうとしてくれているのか、就職試験と情報処理試験が簡単になるよう取りはからってくれているのか、はたまたカミさんに注目してくれているのか。だが位置からしてこれは厄年の人たちのお祓いに違いない、そう信じ頭を垂れないでいた。
前に座っているカミさんも理解に苦しんだようで、頭を垂れないでいる。とはいえ二人を除く左側の人たちはみな頭を垂れているのだ。
きっと勘違いしている。そのうち就職試験にも情報処理にも順番が回ってくるのだ。その証拠に神主さんと目がチラと合ったのだが、なにもいわないではないか。そしてなにもいわないままお祓いが始まったではないか。
だがそうではなかった。お祓いが終わると神主さんはまた左にある祭具の前にもどり、神さまとなにやら交信を始めようとしたのだ。
つまり左側丸抱えのお祓いだったのだ。とするとカミさんと二人して頭を垂れずにお祓いを受けたことになる。
次の祭事に移られてはまずい。そう考え慌てて要求を出した。
「すいません。ここにもお祓いお願いします」
すぐ前だから声は聞こえたはずだ。だが振り向かない。儀式にも合理性が必要なのだ。頭を垂れないと願いは叶わないに決まっているだろう。
そう思うと己を奮い立たせ、もう一度声をかける。
だが神主さんも儀式に合理性を持たせているのかも知れない。お祓いは一度だと確信しているかもしれない。だとするともうあきらめるしかない。そう思ったときだ。なんと神主さんは振り向いたではないか。そして近づくと苦り切った顔をしながらも神妙に頭を垂れた二人にお祓いをしてくれたのだ。
やはり神さまはおられるのだ。
梅ケ枝餅、おいしかったです。
頭を下げた幼稚園生!
本当にそれだけで合格って言ってあげたいですよねぇ~
神主さんをもう一度呼び戻すなんてすごい!
さすがです!!
梅ケ枝餅たべたぁーい!
何のためのお祓いだったんだろう?院長の素行が良くなるように・・・かな?
>Anonymousさん
そばの九州国立博物館もデートポイントでお勧めです。
>tamakitiさん
当たらずとも遠からずです。