がまの油

今日、ひょんなことでクリニックで使うパソコンのプログラムの一部に異常があることが判明。請求業務としてはあまり起こらないケースで、いままで問題なく過ごしてきてたようだ。患者さんのいないときに、いくつかのシミュレーションをやり、問題の所在だけは確認でき、夜を復旧作業にあてる。


 開業して10年になるが、当初より自作のプログラムを用い、保険点数の改訂のたびに、せっせと手直しをしてきた。ときどき気が向けば version up してきたが、なんといっても一番の改装は 昨年の夏の Windows版への移行。それまでは NECの 98note という弁当箱みたいなパソコンを用い、MS-DOS上で、えっちらおっちら動いていた。これが7,8年目頃より2,3ヶ月に一回ぐらい電源を入れても動かなくなっていたのだ。いろいろやってみた結果、ハードディスクを取り出し、本体との接触部分にフーと息を吹きかけると、とりあえずは動き出すことが判明した。スタッフは動き出すたびに、ワーと拍手し、こちらもどんなもんだい、という顔をしていたが、内心複雑。
 小さい頃、近くの公園に”がまの油”なるものを売りにきていたおじさんがいた。羽織袴の格好で、手にした刀で自分の腕にゆっくりと傷を入れる。確かに血が流れ、幼心に、すげーと思ったが、それ以上にすごいのが、その傷に”筑波の山のふもとの大ガマが、たらりたらりと流した油を”、と口上を述べながら、なにやら薬らしきものをつけると、すぐに傷が消えるのだ。いまでこそからくりは容易に想像がつくが、そのおじさんの気持ちも、きっと同じだったのかもしれないな、とふと思う。
 とはいうものの、原因を明確にしておかねばと、思い切って修理に持ち込む。ハードディスク自体は故障していないことが分かり、どうも接触不良のもよう。交換を希望すると、旧式のためハードディスクは、もう生産中止になっているとのこと。自作のプログラムといってもメーカーものと比較しても遜色なくいろんな作業をこなしていて、図体がかなりでかいため、Windows version に手作業で移すのはまず無理だろうとの判断はあった。といことで、いろいろ不安があったが、思い切って中古の NEC の VALUESTAR を手にいれ、なんやかんややっていたら、うまくプログラムの移植ができたのが、昨年の8月のこと。それ以来順調だったのに。
 件のプログラムの異常は、よくもまぁこれまで無事に動いていたものだ、というほどのプログラムミスで、まさに油汗ならぬ冷や汗をかきながら無事修正できたのであります。
 ところで、あのおじさん、やっている最中になにかクレームなんかつけられたこと、ないのかなぁ。おじさんの演技のあと、見ていた客が争うように薬を買い求めていたが、あれはサクラだったのかなぁ。
 IT 時代には、とうていできない経験でした。

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