資本論


一昨日、”資本論も読む” ( 宮沢 章夫 著 幻冬舎)という文庫のエッセイを急ぎ読了した。なぜ急いだかというと、もう一冊読みかけの本があり、それを週末ゆっくりと目を通したかったからだ。そうはいっても資本論を読み物として読むという視点で展開されるこなれた文章はなかなか味わい深いものがあった。


資本論に出てくる等価交換という言葉などはなんとなく理解できるが交換価値や価値形態などむずかしい概念が出てくるとなにがなんだか分からなくなる。とはいえ、一言でいえば世の中どうして金持ちと貧乏人がいるのかを解き明かした書物だと個人的には捉えている。なぜうちのクリニックが貧乏なのか、資本論を読まなくても実体験として分かるのだが、読めば理屈としてうなずける、そんな書物なのだ。
そんな貧乏な医者にもときに金運らしきものが舞い込んでくる。友人から近郊のシティホテルに安く泊まれるからと宿泊を勧められたのは8月ごろ。シティホテルといっても相当ランクが上のホテルでそれもびっくりするほど格安-国民宿舎なみの価格-で泊まれる。なにより気をそそられたのは夕方からの数時間クラブ形式のロビーでアルコールが飲み放題という点だ。ほかの時間帯ではスイーツ食べ放題ということもありそれをエサにカミサンを説き伏せ宿泊予約をすることにした。その予定日が昨日のことだった。
”資本論も読む”を早く切り上げたのは、ロビーでビールでも飲みながらもう一冊をゆっくり堪能しようとの魂胆だったのだが、計画は少し変わってしまう。一家そろってホテルの部屋に入り、その豪華さに驚きいろいろ部屋を物色していると、冷蔵庫にビールがあるのことが判明したのだ。もちろんそこそこのホテルであればそんなのは当たり前のことだろうが、アルコール飲み放題の大盤振る舞いをするホテルのこと、冷蔵庫のアルコールもロハに決まっている。それもサービスが行き届いていることにいろんな銘柄が1本づつそろえてある。一夜限りのハイソの仲間入りを乾杯しようとさっそく350ml缶のプルトップを開けた。
読書が進むにつれ当然アルコールの消費量も増える。事態はビールを4缶ほど空にしたところで起こった。ふとカミサンが気づいたのだ。部屋に置いてあるホテルの案内パンフレットに冷蔵庫の中身(ほかにも清涼飲料水など入っていたのだが)の値段が記されていることに。ビール350ml1缶670円なり。ロハと思ったのは単なる思いこみだったわけで、そのあと複雑な感情がビールの泡のように湧いてきた。
そんな馬鹿な。スーパーならせいぜい200円台半ばの値段だ。それがホテルではなぜこれほど高くなるのか。それにロビーでは飲み放題なのになぜ部屋で飲んだらお金を取られるのか。
等価交換かなにか知らないが、マルクスさんは間違っていたんじゃないのか。そんな憤りともなげきともつかない感情を抱きながら、酔った足でさっそくホテルを出ては近くのコンビに向い冷蔵庫にあったと同じ銘柄のものを4種4本買いそろえ、そいつらにはなんの責任はないものの、放り込むように冷蔵庫に押し込んだのだった。
これって等価交換なのですか、マルクスさん。これは4本論でいいのですか、ねぇねぇ、マルクスさん。

写真はくだんのロビーで、ホテルのHPから拝借したもの。さすがにそこで記念写真を撮るのは一夜限りのハイソとしてははばかられた。

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