千年の街

「千年の街」のキャッチフレーズで一時テーマパーク界をリードしたハウステンボスが倒産した。
 で、ハウステンボスにまつわる忘れられない思い出がある。ここのクリニックを開業してまもない頃、一泊二日の医師会旅行があり、まぁ顔を知ってもらおうとボクも参加した。10月のことで、マラソンシーズン真っ盛りのころ。2週後に、あるレースを控えていたので、ランニング用具を持っての参加。最初の日はハウステンボス内のなんとかいうりっぱなホテルで宴会があり、そのままそこに宿泊。翌朝酒が残っていたのだけど、気合い入れねばと、早くに起きてハウステンボスの中を何周も走り回った。
その練習が終わったときのこと。


 あまり目立つのもどうかと思い、かなり早くから走り出し、なおかつ結構短い時間で切り上げたつもりでホテルに戻る。で、エレベーターに乗り込もうとすると、ちょっと業界が知れるような黒服を着たおっちゃんが、ニコニコしながら「早いね」なんて声をかけてくる。
「はぁ」と適当にあいさつして、知らないそぶりが賢明だろうと、あとは宿泊階まで黙ったままを通す。その後シャワーなんぞ浴びて朝食の会場に向かったのはいいけれど、そこをよーく見渡すと先ほどのおっちゃんがおられるではありませんか。
要するに同じ医師会の先生だったわけでして。
 ああ、さきほどはどうも、なんてあわてて挨拶しても後の祭りで。なんとなく気まずく、かの先生も言葉にこそ表わされないが「この若造めが」ってなカンジの態度。
 先生方は新参者のボク一人を覚えればいいのだけど、ボクはみなさんを知らなくてはならないというハンディがあったのも事実。そうはいってもせいぜいが二、三十人の団体のこと。やはり覚えていないボクが悪いんだろうなぁ。かたやトレーニング姿のボクを一目で分かってもらえたんだし。
 その後、医師会の会合なんかでお会いしても、なんとなくその先生はボクのことを敬遠されておられるような気がするし、ボクもなんとなく声を掛けづらくて。
 ボクらの仲も「千年の待ち」になったのであります。

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