電子カルテ雑感

自作の電子カルテを稼働させ早3ヶ月になろうとするが、いくつか気づいた点がある。その一つがカルテのレイアウトだ。
カルテは左右の覧に分かれていて、左に病気の経過や自分の意見などを書き、右に行った行為を書くようにお上から定められている。たとえばとてもきつそうな患者がうちのクリニックに来たとしよう。すると左の覧に、”なぜこんなヤブのところに来るのだ”と書き、右の覧に”ほかの病院へ紹介状しました”という具合に書きわけるのだ。だが、右と左の情報量、つまりは文字数には多くの場合アンバランスが生じる。たとえばこんな具合だ。
“なぜこんなヤブのところに来たのだ。本当にきついなら最初からもっとまともな医療機関に行くべきと思う。いやその判断ができなほどきついのかもしれない。これはほんとに重病か。まずいぞ”という左覧の文章。そして”あわててほかの病院へ紹介状しました”の右覧の文章。この二つの文章には字数の違いがある。こうした記述が一回で終わればいいが、日にちを変えて記載するとき、左右覧の書き始める位置を一致させるとすれば、それは必然的に左右どちらか一方に多少に関わらず空白が生じることを意味する。


電子カルテを作るときこの事態を憂慮すべき重大な事柄として考えてみた。
問いつめればカルテとは情報以外のなにものでもない。情報は密に詰まっていた方がいい。だとすれば、空白などカルテにとって邪魔もの以外のなにものでもない。よく考えて見ろ。物質は原子がびっしりつまっているんだぞ。その原子より小さい電子のカルテだ、びっしり書くのが当たり前じゃないか。
それに加えお上の言葉をネットで調べ直すと、左右覧の形式に準じていればいいとあるのを見つけた。ということで右と左に分けるのではなく、上下に続けて、すなわり”なぜこんなヤブのところに来るのだ。本当にきついなら最初からもっとまともな医療機関に行くべきと思う。いやその判断ができなほどきついのかもしれない。これはほんとに重病か。まずいぞ”、の次の行に”あわててほかの病院へ紹介状しました”と続けて書くようにしたのだ。
だがことはそう単純ではなかった。さらに詳しくいえば右には症状の経過や検査結果に対してのコメントや今後の治療方針などを書き、左にはやった処置や薬の内容やよく分からない管理料などを記録する。左右に並べて見比べればなんとなく相互の関連がなんとなく分かるものが、だらだらと繋げてしまうと内容を把握するのに少々とまどってしまうことになる。
患者も一緒に見ることのできる画面なので、見づらくなったことはうまく患者の目をごまかすことができるようになったと最初のうちは喜んでいたのだが、そのうち自分でもなにがなにやら分からなくなってしまった。
ということで左右覧に分かれて表示されるよう急ぎ修正。分けてみると確かに相当に見やすいものになっている。
情報は詰まっている方がいいのではないのか、という直感は間違っていたのか。一体情報とはなんなのか、考えていると、ふと思いついた。そういえば電子はスカスカの空間を飛んでいるのだったな、と無理矢理自分を納得させた次第。

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