電子カルテ管理運用規定

厚生労働省が示した電子カルテのガイドラインには電子カルテを使いたければそれぞれの医療機関で管理運用規定を決めろと書いてある。お上の言葉は神のお告げ。逆らったらカミナリに打たれるに違いないく、さっそく雛形にそって作ってみたがどうも釈然としない。
もちろん患者の個人情報が絡むことなので慎重な上にも慎重な運用が必要なことは理解できる。缶ビンのゴミ出し日にゴミ袋の中の大量のビール缶をいつも他人の目につかないよう工夫している者としてはあたり前のことだ。問題はその雛形の「電子保存に関する理念」の項目にある”自己責任の原則”という言葉だ。
みことのりはかくの如しだ。
「電子保存システムの管理者及び利用者は、電子保存が自己責任の原則に基づいて行われることをよく理解しておかねばならない」
お上は電子カルテには真正性、見読性、保存性という3大原則が必要だとしている。だが、そのやり方にはいずれも決定打がないようで、仮にあったとしてもいくつものベンダーが市場に参入している現状では号令をかけることには無理がある。
ということであとは自分で責任をとってね、という御神託なのだ。
うまく隠したつもりの大量のビール缶がご近所の人目に触れれば、すべての責任はこのおやじにある。それは分かる。だが、もし電子カルテのシステムの不備で問題が生じたらそれも医療機関が負わねばならないのかと思うと、少しばかりの不満が残る。
それを覚悟で電子カルテを使いなさいというわけなのだろうが、ほとんどの医療機関ではプログラムどころかデータがどう動いているかさえ把握することもできなのが実情ではないだろうか。つい最近も大手中の大手の電子カルテが紹介状の薬剤がほかの患者のものに変わっていたという事件があったばかりじゃないか。中小のベンダーさんにいたってはバグがあって当たり前のような気がするのだ。
どの電子カルテが正確に稼働するかは分からず、いわば医療機関の電子カルテの選択は運任せ、というわけだ。
ということで電子カルテの管理運用規定は管理”運”用規定と名前を変えた方がいいのではないかと強く思うのである。
なおついでだからうちの規定とカルテ仕様のたたき台を載っけてみた。


           【 おやじクリニック 電子保存に関する運用管理規定と電子カルテ仕様 】
             *************************************************
                     電子保存に関する運用規定
             *************************************************
1.本規定は法令に保存義務が規定されている診療録および診療諸記録の電子媒体による保存のために使用されるハード、ソフト両面の運用に関する運用管理に関する諸事項をさだめるものである。この規定を遵守することで患者情報を適正に保存し利用することが可能となることを目的とする。
2.電子保存システム管理の責務は院長が負うものとする。必要な場合は院長が別に十分な管理指導のもと代替させることができる。管理者は、電子保存が自己責任の原則に基づいて行われることをしぶしぶよく理解した上、運営にあたる。
3.電子保存システム管理とは以下のことを意味する。
 ・医療行政が示すガイドラインを適宜熟知し、その各項目に適合するよう努める。
 ・ハードならびにソフトが支障なく運用される環境を保持する。
 ・すべての患者情報の安全性を確保し常時利用可能な状態におく。とりわけ電子化された情報に関してはその移動に関してはアナログ情報以上に注意を払う必要なことを念頭におく。
 ・ハード、ソフトの変更があっても連続した患者情報として取り出せるよう環境を整える。
 ・電子保存システムを利用できるのはシステムを管理するもののみとする。なお別の端末での操作は閲覧のみ可能でかつ診療明細と投与薬剤に限られる。
4.電子保存システムへのアクセスはパスワードで保護され、パスワードは管理者のみが運用できる。なお不慮の事故に備えパスワードは信のおける第三者が厳重に保管する。また火災等の緊急事態にも対応できるよう装置を備える。
5.その他、この規定の実施に必要な事項があるときは、管理者がこれを定める。
6.この規定は平成23年○月1日より施行する。
             *************************************************
                        電子カルテ仕様
             *************************************************
(はじめに)
当電子カルテはRDB桐言語、JAVASCRIPT言語、HTML言語で記述されており、当電子カルテを用いて経過等記載、処方等記載、既往歴記載、作図記載の4つを記録することができる。
1)経過等記載とは保険医療養担当規則でいうところの 原因、主要症状、経過等 に相当するもので、患者の自覚症状、身体所見、検査所見、その評価と方針を記載するものである。
2)処方等記載とは保険医療養担当規則でいうところの 処方、手術、処置等 に相当するもので、診療報酬体系と連動した診療内容を記載するものである。
3)既往歴記載とは患者の過去の罹患した病名、治療を記載するものである。
4)作図記載とはレントゲン写真のスケッチ等、経過等記載ならびに処方等記載を補足する図をJPEG画像として取り込み、記載するものである。
                 ****************************************************************
【真正性の確保】
(1)経過等記載、処方等記載、既往歴記載、作図記載が確定した際、ならびにそのデータの修正が確定した際、生じたそれぞれのデータにはタイムスタンプ(例:2010年01月01日00時00分00秒)が刻印される。
(2)診察日の確定は以下の時点で行われる。
経過等記載では通常、患者の診察終了後、やむを得ず延期する場合は少なくとも診察日終了までに確定される。処方等記載は別途稼働する診療報酬請求プログラムと連動しており、患者への領収書発行時に確定される。既往歴記載では随時に既往歴を変更したときに確定される。作図記載では作図保存時に確定される。すべての確定は管理者のみ入力可能である。
なお経過等記載、処方等記載ならびに既往歴記載については同じ内容であればその確定は無効となる。また作図記載で得られた画像は判読可能な範囲で縮小されてカルテに表示され、画像のクリックで取り込み時の大きさに拡大する。
(3)カルテの修正は以下のように行われる。
カルテの修正とはデータの削除、追加を意味する。修正は管理者のみが行うこととする。
診察日以外のカルテの修正は原則として行われるべきではないが、やむを得ず修正の必要が生じた際は以下の基準にそって行われる。
経過等記載は医師の判断等、変更を加えるべきではない項目を含んでいる。診察日であればいずれの修正も可能であるが、診察日以外の修正については追加は可能であるが、削除はできない。
処方等記載は診療報酬体系と連動した内容であり、請求業務など同体系との関連でやむなく変更の必要性が生じた際にはいずれの修正も可能である。既往歴記載も随時にいずれの修正も可能である。作図記載は修正できない。
なお修正は作業日より遡って3ヶ月前までのデータに対してのみ可能である。
経過等記載ならびに処方等記載が修正された場合、 カルテの該当個所に altered の文字が表示される。altered をクリックすることでタイムスタンプで記録された修正時刻ならびに修正内容が確認できる。既往歴の修正は別途操作で修正内容を確認することができる。
いずれの場合も、削除された内容には赤の削除線が引かれ、追加された内容には黒の下線が引かれる。



(4)当電子カルテを操作中に、カルテに付与されたすべてのデータ、すなわち経過等記載、処方等記載、作図記載、修正内容のいずれか、もしくはすべてのデータはフォルダ名を診察日の年月日としたフォルダに保管され、またそれぞれのデータはログインID、カルテ番号ならびに日付を接尾語としたハッシュ値(SHA-1)としてそのフォルダに保管される。



なお経過等記載ならびに処方等記載については診察日より遡って3ヶ月前までのデータを取り出したものにハッシュ値が与えられる。
ハッシュ値はパソコン内の前述のフォルダに保管されるとともに印刷され、印刷された紙は前後の日付のものと連続性を保ち、かつ割り印など改竄ができない工夫を以て管理されるものとする。
【保存性の確保】
午前、午後の診療終了後の2回、すべてのファイルが2台のHDにバックアップとして保存される。
【見読性の確保】
どのページも必要なときは直ちにページごとの印刷が可能である。
【安全性の確保】
パソコンの起動は管理者が管理するパスワードを以てなされる。カルテの閲覧は管理者が立ち会うときのみ可能で、管理者がその場を離れるときはパソコンをシャットダウンあるいは休止モードに入れることで管理者不在時の閲覧を防止する。
必要によりセキュア桐による暗号化で第三者によるUSB等のデータの複写、データの解読が防止される。
                 ****************************************************************

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。