装甲車

連休で遠出をした。高速道路に乗るため料金所の手前の信号で右折するため対向車をやり過ごしていたときのこと。対向車線から装甲車がやって来てそのまま左折して高速道路へと向かって行った。平和ぼけしている頭は一瞬混乱したが、10数キロ圏内に自衛隊の演習場があることを思いだし、そんなこともあるのだろうとすぐに納得したのだが、車両が見えなくなったあとになにか違和感が残った。というのは装甲車の最上部のハッチ-といってもいくつハッチがあるか知らない。想像するにハッチ個ぐらいだろうか-から隊員が上半身を出していたのだ。


自問するように同乗していたカミさんに語りかける。
人がハッチから身を出すというあの体勢は一般道を走行するときの規則-イヌとかネコとかまぬけな院長にハッチ合わせしたとき指示を出すための-ではないだろうか。もしそんな規則がなければ、むしろ今見たような体勢はなんらかの規則違反になるのではないか。
そうなだったかしらね、と曖昧な-きっといつもの嘘ハッチ百が始まったのだろうという猜疑心と、身を乗り出していたのは視力低下による見間違えだろうという懐疑心を伴った-返事が返ってくる。それじゃはっきりさせようと先行する装甲車を追いかけてカミさんに撮ってもらった写真がこれだ。


どうだ、やはり上半身が出ているだろ、カミさんに同意を求め、その勢いでカメラを準備させた。時速80キロほどで走行していたものを後方から激写させ、それを追い抜いて、撃たれはしないかとおびえる心を鬼にして、カミさんに前方からも撮らせたものだ。


写真の青空が示すようにこの日は小春日和で隊員もさほどつらくはなかったとは思う。でももし想像する規則が存在するなら、天候にかかわらずハッチから半身を出していなければならない。
雨だけではない。この地域はまもなく雪が降り積もる山岳地帯なのだ。そんななかを時速80キロで半身を出していく姿を想像してみた。
ああ、つらい。でも、それをなんといい表せばいいのだろう。
しばらく考えてみて、ふと後方に付いたときの隊員の姿を思い出した。身を出していた彼は銃器を手にしていなかったのだ。
そうだ、そんな隊員に最適の言葉がある。それは 無鉄砲 だ。

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